Chapter 07 / 08

数式を、相談の流れへ戻す

母と娘の一つの相談の中で、三つの模型はそれぞれ何を受け持つのか。式の見取り図から、もう一度たどってみよう。

Daiki Morimoto · 約4分 · 最小構成モデルの解説

一つの会話を、全部一つの点数にしない

母は店で自分で選びたい。娘は帰り道が心配で、毎回は付き添えない。作業療法士は説明を確かめる。想定した相談AIは、希望と支援の範囲を分けて整理する。

この会話全体を、一つの数値に縮めるわけではない。数式に取り出せる部分と、人が確かめる部分を分ける。

聞いて、理解を更新する · M1M′ = M + λ(O − M)場面3。「前はね。最近は、もう少し自分で出かけたい気持ちもあるの。」新しい情報を見立てへ反映する。更新のつまみへ戻る →
心配も含めて、案を出す · M1Q = clip(M′ − βr)帰りの荷物の心配を提案に反映する。本人の返事を作る式ではない。
本人の返事と条件を、別に確かめる · M0H = 1、受入・修正 → 本人が選んだ案をDにする場面3から4。説明の確認と今回の本人の選択。AIが推薦しただけでは決定しない。返事と六条件へ戻る →
別の実験として、架空の応答を作る · M2Y(a) = (1 − a)B + aQᴬ実際の会話の続きではない。応答の変化と候補の変化の違いを調べるための合成実験。応答のつまみへ戻る →

数式が返すこと、返さないこと

M1の例で、見立てが0.68、おすすめが0.38になった。M0へは、それとは別に「今回は支援付き外出を選ぶ」という本人の返事と、確認した条件を与える。そこでD=0になる。

0.38を丸めて0にしたから本人の決定になったのではない。 本人が選んだ0を、条件がそろったときに決定として扱ったのである。この違いを飛ばすと、提案がそのまま本人の意思へすり替わってしまう。

しかもD=0だけでは、日曜日という日程や、娘の付き添いが可能かは分からない。移動の安全や実行の準備も、別に確かめなければならない。

会話を思い出しながら、確かめよう

① 母がうなずいた。家族も専門職も賛成。もう決定?

それだけでは決められない。場面3の母は、最後の説明を聞き取れていなかった。誰が賛成したかと、本人の理解・返事の確認は別である。

② 「今回は日曜日に一緒に行こうか」。今後も毎回、娘の付き添い?

そうは言えない。娘が引き受けたのは今回の日曜日であり、母も「その先は、また考えたい」と話している。今回の決定を将来へ自動で延長しない。

③ 支援付き外出で、希望との近さが0.6。本人主権も60%?

違う。0.6は数値上の距離から求める近さにすぎない。説明を理解し、修正や拒否ができ、本人が選んだかを、その値だけで評価することはできない。

④ 母の話が変わったから、λを大きくすれば正解?

大きなλは、新しい情報を強く取り入れる。ただし、その情報が継続した変化か、その日だけの揺れかで意味が違う。式だけで最適な割合は決まらない。

ここまでで見えてきたこと

本人主権のすべてを、一つの式で証明できたわけではない。それでも「提案を返事と混ぜない」「未確認を承諾に変えない」「拒否を過去の委任で上書きしない」といった違いは、処理の規則として明らかにできる。

小さな規則にすることで、別の人も同じ条件を入れ、同じ動きを確認できる。そこから、何がまだ表せていないかという次の問いが生まれる。

このWeb版は、日本語全文記事の内容を小分けにし、操作できる例題を加えたもの。数値は説明用の仮定であり、実在者の測定結果ではない。

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