数式を、相談の流れへ戻す
母と娘の一つの相談の中で、三つの模型はそれぞれ何を受け持つのか。式の見取り図から、もう一度たどってみよう。
一つの会話を、全部一つの点数にしない
母は店で自分で選びたい。娘は帰り道が心配で、毎回は付き添えない。作業療法士は説明を確かめる。想定した相談AIは、希望と支援の範囲を分けて整理する。
この会話全体を、一つの数値に縮めるわけではない。数式に取り出せる部分と、人が確かめる部分を分ける。
数式が返すこと、返さないこと
M1の例で、見立てが0.68、おすすめが0.38になった。M0へは、それとは別に「今回は支援付き外出を選ぶ」という本人の返事と、確認した条件を与える。そこでD=0になる。
0.38を丸めて0にしたから本人の決定になったのではない。 本人が選んだ0を、条件がそろったときに決定として扱ったのである。この違いを飛ばすと、提案がそのまま本人の意思へすり替わってしまう。
しかもD=0だけでは、日曜日という日程や、娘の付き添いが可能かは分からない。移動の安全や実行の準備も、別に確かめなければならない。
会話を思い出しながら、確かめよう
① 母がうなずいた。家族も専門職も賛成。もう決定?
それだけでは決められない。場面3の母は、最後の説明を聞き取れていなかった。誰が賛成したかと、本人の理解・返事の確認は別である。
② 「今回は日曜日に一緒に行こうか」。今後も毎回、娘の付き添い?
そうは言えない。娘が引き受けたのは今回の日曜日であり、母も「その先は、また考えたい」と話している。今回の決定を将来へ自動で延長しない。
③ 支援付き外出で、希望との近さが0.6。本人主権も60%?
違う。0.6は数値上の距離から求める近さにすぎない。説明を理解し、修正や拒否ができ、本人が選んだかを、その値だけで評価することはできない。
④ 母の話が変わったから、λを大きくすれば正解?
大きなλは、新しい情報を強く取り入れる。ただし、その情報が継続した変化か、その日だけの揺れかで意味が違う。式だけで最適な割合は決まらない。
ここまでで見えてきたこと
本人主権のすべてを、一つの式で証明できたわけではない。それでも「提案を返事と混ぜない」「未確認を承諾に変えない」「拒否を過去の委任で上書きしない」といった違いは、処理の規則として明らかにできる。
小さな規則にすることで、別の人も同じ条件を入れ、同じ動きを確認できる。そこから、何がまだ表せていないかという次の問いが生まれる。
このWeb版は、日本語全文記事の内容を小分けにし、操作できる例題を加えたもの。数値は説明用の仮定であり、実在者の測定結果ではない。
全文PDF・英語研究原稿・参考文献へ →