ETIC 2.0 用語集
ETIC 2.0を読むための用語を、既存用語、既存概念をETICで拡張した語、ETICの構成・説明語に分けて整理しました。名称の新規性と、ETICでの使い方を混同しないための分類です。
最重要の用語について: 作業療法でいう「作業(occupation)」は、仕事だけを意味しません。本人にとって意味・目的・価値を持つ生活行為の全体を指します。また「占有」という訳語は使いません。
- 作業 Occupation 既存用語
- 本人にとって意味・目的・価値を持ち、日常生活・役割・参加を構成する生活行為。食べる、着替える、家事、学び、仕事、遊び、人との関わり、休息、趣味を含み、有償労働に限定されない。日本作業療法士協会は「対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為」と説明している。
- 活動 Activity 既存用語
- 行為の一般的なカテゴリー。作業(occupation)と近い言葉だが、作業には本人の意味、目的、文脈が含まれる点が異なる。ETIC 2.0ではoccupationの主訳語にしない。
- 参加 Participation 既存用語
- 本人が生活場面、社会的役割、共同体、活動に関わること。ICF(国際生活機能分類)などで用いられ、ETIC 2.0では作業の成果・目的として扱う。
- 環境 Environment 既存用語
- 物理的、社会的、制度的、デジタルな条件。ETIC 2.0では、住まいや地域に加えて、AI、データ、デバイス、通信環境、電子カルテ、アルゴリズムも環境に含めて捉える。
- 作業的公正 Occupational justice 既存用語
- 人が意味ある作業に参加する機会の公正と権利。AI導入による格差や排除を評価する視点として、ETIC 2.0でも重要な基盤になっている。
- ケア生態系 Care ecosystem 既存概念をETICで拡張
- 本人の意味ある作業と参加を中心に、本人、家族、専門職、AI、デバイス、データ、住環境、地域資源、制度が相互に影響し、時間と状況に応じて変化するケアのまとまり。Hwangらの動的ケア生態系を主要な概念的先行研究とする。 → 詳しい解説
- AIを含むケア環境 AI-inclusive care environment ETICの構成・説明語
- AI、センサー、アプリ、電子カルテ、データ基盤が、本人の生活とケアに影響する環境の一部になっている状態。「AI中心」ではなく「人の生活中心」とセットで使う。
- ケアテクノロジスト Care technologist 既存概念をETICで拡張
- 英国の成人社会ケアで公的に整理されている既存の新興役割名。ETIC 2.0では、ケア、生活、技術、データ、制度、倫理を横断し、本人の作業参加を中心にケア生態系を設計・調停する役割へ範囲を広げて用いる。国際的に統一された単一資格名ではない。
- 設計レビュー Design review 既存概念をETICで拡張
- ケア生態系の設計が、作業参加、安全性、説明責任、データ統治、公平性を満たしているかを実装前に確認すること。評価されるのは本人や専門職ではなく、ケアやシステムの設計である。 → 詳しい解説
- 作業参加中心設計 Occupation-participation-centered design 既存概念をETICで拡張
- 既存のoccupation-centered designや人間中心設計に隣接し、本人の意味ある作業と参加を中心に、環境、技術、データ、制度を設計するというETIC 2.0の説明語。名称自体の新規性は主張しない。
- AI層 AI Layer ETICの構成・説明語
- ETIC参照アーキテクチャの一つの層。予測、要約、推薦、記録支援、異常検知を扱う。確認する問いは「AIは何を補助し、どこから先は人間が担うのか」。 → 詳しい解説
- データ層 Data Layer ETICの構成・説明語
- ETIC参照アーキテクチャの一つの層。電子カルテ、生活データ、センサーデータ、本人生成データを扱う。確認する問いは「どのデータを集め、誰が見て、どこに保存するのか」。 → 詳しい解説
- 統治層 Governance Layer ETICの構成・説明語
- ETIC参照アーキテクチャの一つの層。倫理、同意、プライバシー、責任、監査、公平性を扱い、すべての層にかかる。確認する問いは「本人の権利と尊厳は、設計段階から守られているか」。 → 詳しい解説
- 計算機自然(デジタルネイチャー) Digital Nature 既存用語
- 計算機科学の視座から、計算機、人、物質世界、実質世界、自然の関係を捉え直す自然観(筑波大学デジタルネイチャー研究室)。ETIC 2.0では、AIやデータが生活環境の一部になる時代背景を説明する関連概念として扱う。
- 分野横断(トランスディシプリナリー) Transdisciplinary 既存用語
- 複数分野が境界を越えて課題を共有し、新しい実践知を作ること。ETIC 2.0では医療、福祉、教育、技術、行政、地域をつなぐケア設計の姿勢を指す。
Version 2.1で確認した主な用語の出典
- Hwang et al. (2025) — 動的ケア生態系とAI AgeTechの予備的指針モデル。
- UK Department of Health and Social Care (2026) — 成人社会ケアにおけるCare technologistの役割区分。
- American Occupational Therapy Association (2025) — 作業療法とデザインを結ぶoccupation-centered designの用例。
各用語の出典と、旧来の表現からの整理の経緯は、ETIC 2.0 PDFの第2章「用語と定義」に収録しています。