Chapter 01 / 08

本人だけでなく、関係を見る

買い物に行きたい。その願いがかなうかどうかは、本人の体の状態だけでは決まらない。CCEの入り口は、その周囲の関係にある。

Daiki Morimoto · 約4分 · 最小構成モデルの解説

買い物は、品物を手に入れるだけだろうか

母は店で魚を見て、夕飯を決める時間を楽しみにしている。娘は帰り道が心配で、代わりに買ってくることを提案する。どちらも相手を思っている。それでも、話は少しかみ合わない。

母が大切にしているのは、自分で見て選ぶ時間。娘が気にしているのは、移動の安全と自分の仕事の予定だ。同じ「買い物」の話でも、見ているところが違う。

本人の体の状態だけを調べても、このすれ違いは見えにくい。誰が手伝えるか、どの道具を使えるか、移動手段はあるか、どんな説明が届いているか。その組み合わせまで見る必要がある。

その周囲を、ケア生態系として見る

ケア生態系とは、本人、家族、専門職、地域、制度、技術などが関わり合いながら、暮らしを支えるつながりを捉える見方である。生き物の森をそのまま再現するという意味ではない。

本人の暮らし何をしたいか。何を大切にしているか。
周囲の人と条件家族の予定、専門職の支援、道具、交通、サービス。
AIやデータとの関係どんな情報から、誰へ提案し、誰が確認するか。

この考え自体はCCEが初めて提案したものではない。Hwangらの「動的ケア生態系」も、本人、ケアパートナー、専門職、AIなどの関係が時間とともに変わることに注目している。先行研究を読む

AIが加わると、関係も変わる

AIは、家族がまだ気づいていない案を出せるかもしれない。記録を整理し、本人と専門職が話し合う準備を支えることも考えられる。一方、家族がAIから受け取った提案を、本人の承諾だと思い込んで話を進めてしまう可能性もある。

AIの性能だけでなく、誰の話を聞いたか、何を推測したか、誰が決めるかが重要になる。本人のためによい結果を目指していても、そのために家族へ無制限の負担を求めてよいわけではない。

ETICとCCEは、何が違うのか

ETICは Eco-Technological Integrative Care の略で、人・技術・環境・社会の関係からケアを設計するための考え方である。ETIC 2.0の全体像では、その設計原理を紹介している。

CCEは Computational Care Ecology の略。この広い問題の一部を、数式や明確な計算規則にして調べる研究構想である。「よい関係とは何か」を宣言するだけでなく、条件を変えたときに規則がどう動くかを確かめようとする。

ただし、最初から暮らしの全部を計算するわけではない。今扱うのは、見立ての更新、本人の返事と決定の区別、架空の応答の変化という小さな部分だ。

ここで持ち帰ること
評価したいのは、本人の価値ではない。本人を取り巻く関係や仕組みが、何を可能にし、何を見落とすかである。

理解度チェック:母の希望だけを調べれば十分?

それだけでは足りない。母の楽しみに加え、娘が引き受けられる範囲、移動の条件、説明と選択の過程も関わる。本人の希望を尊重することと、周囲の人へ何でも要求することは別である。

このWeb版は、日本語全文記事の内容を小分けにし、操作できる例題を加えたもの。数値は説明用の仮定であり、実在者の測定結果ではない。

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