Chapter 06 / 08

同じ案でも、考えは動いている

AIの話を聞いて返答が変わっても、いちばん近い案は同じかもしれない。ここでは、実験用の応答を作って二つの変化を見分ける。

Daiki Morimoto · 約5分 · 最小構成モデルの解説

Try the model · M2

三つの案の位置を −1・0・1 と置く。これは本人の点数ではなく、計算のための目印である。

Y(a) = (1 − a)B + aQA
式で作った架空の応答 Y0.40最も近い候補:支援付き外出(0)

応答の値は変わるが、最も近い候補は変わらない。

━━ 合成応答 Y┄┄ 最も近い候補

二つの変化を、数値でも比べる
応答の変化 IY0.10
決定の変化 ID0.00

a=0の場合と比べた距離を2で割る。上の設定を外したときや同距離の候補があるときは、決定の変化を計算しない。未決定を0へ置き換えない。

aは本人の性格や「AIに弱い度合い」ではない。人の反応を予測する式ではなく、二種類の変化を見分けるための合成実験である。

ここからは、別の実験

前の記事のM0は、本人の返事を外から与えた。ここでは代わりに、Y(a)=(1−a)B+aQᴬ という式で架空の応答を作る。Bは提案前の応答、QᴬはAIの提案、aはそれを混ぜる割合だ。

これは人の心を予測する式ではない。本人から聞いた返事と入れ替えて使うためのものでもない。条件を自分で決めた小さな世界で、どんな変化を見分ける必要があるかを試す。

数字が動くことと、案が変わること

最初の設定はB=0.2、Qᴬ=1、a=0.25。式は Y=0.4 を返す。提案前の0.2から0.4へ動いたが、最も近い候補はどちらも支援付き外出0だ。

今度は「候補も変わる」を押してみよう。a=0.5ならY=0.6となり、最も近い候補は単独外出1へ変わる。グラフでは応答がなめらかに動き、候補が段階的に変わる様子が見える。

地図上を少し移動しても最寄りの駅は同じだが、ある境目を越えると別の駅に近くなる。それに似た違いである。

同じ距離なら、勝手に選ばない

最も近い案を探す規則は、π(Y)=arg min |ω−Y| と書ける。「arg min」は、差がいちばん小さい候補を返す、という意味だ。ωには−1、0、1の案を順に当てはめる。

「二つの案が同じ距離」を押すと、Y=0.5になる。0と1までの距離が同じなので、両方を残す。最も近い数値の案を出すことは、本人がそれを選んだことではない。

なお、三案を一本の軸へ等間隔に並べたのは、この模型の仮定である。現実での最善案を距離だけで選べる、という意味ではない。

変化を二種類で記録する

追加表示では、a=0の場合と比べた応答の差IYと、決定の差IDを別々に計算する。式はそれぞれ、動いた距離を2で割るものだ。

ただし決定の比較には、全権利条件を満たし、単独の最寄り候補を本人が確認したという実験上の追加設定を置いている。この設定を外したときや同距離の候補があるときは、決定を確定せず、IDを計算しない。

未決定を0として引き算すれば、支援付き外出を選んだかのような計算になってしまう。前の記事の⊥と0の違いが、ここでも大切になる。

変化が大きいと、よくない影響なのか

新しい情報を得て、納得して考えを変えたのかもしれない。あるいは断りにくくて合わせたのかもしれない。この二つは、動いた量だけでは区別できない。

小さな変化なら本人主権が守られ、大きな変化なら侵害された、と判定するのも誤りだ。何を説明され、どんな別案があり、どう断れたかを一緒に確かめる必要がある。

決定だけを記録すると、見えない変化がある。
ただし、変化の量を測ることと、その影響のよしあしを判断することも別である。

理解度チェック:0.2から0.4になった。候補が同じなら変化はゼロ?

候補の変化はゼロだが、応答の数値は0.2動いている。この実験ではIY=0.1。何が変わったかを分けて記録する。

このWeb版は、日本語全文記事の内容を小分けにし、操作できる例題を加えたもの。数値は説明用の仮定であり、実在者の測定結果ではない。

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