Computational Care Ecology

CCE 概要

AIとともにあるケアを、
数理モデルから考える。

「よい提案」と「本人が決めたこと」は、同じだろうか。
ケアの身近な場面から、小さな模型の中をのぞいてみよう。

人と周囲の関係を数理的な構造として表した、CCEのシンボル

CCEとは、何を考える研究なのか

CCEは Computational Care Ecology の略。本人を取り巻く人・AI・道具・環境・制度の関係を、数式や計算規則を使って調べる研究構想である。このつながりを「ケア生態系」と呼ぶ。本人の価値や能力を採点するのではなく、支える側の仕組みが、本人の選択をどう支えるかに目を向ける。

たとえば、母は店で魚を選びたい。娘は移動の安全が心配だ。AIが便利な案を出しても、それだけでは母が納得したことにも、娘が付き添えることにもならない。提案のよさ、本人の返事、家族の負担を分けて考える必要がある。

本人主権とは、最後に「はい」と答えることだけではない。説明を理解し、断り、別の案を求め、後から考え直せることまで含む。一方で、本人の希望を尊重することは、家族や支援者へ無制限の負担を求めることでもない。

なぜ、数理モデルを使うのか

数理モデルは、知りたい仕組みだけを取り出した「小さな模型」だ。「今日の話をどれだけ取り入れるか」「返事が曖昧なときに決定へ進むか」といった規則をはっきりさせ、条件を変えて動きを比べられる。

この連載では、CCEの第一歩となる最小構成モデルを読む。三つの模型は、それぞれ違う問いを受け持つ。

M1 · 見立てを更新する以前の理解と新しい観察を、どんな割合で取り入れるか。
M0 · 提案と決定を区別する本人の返事、決める権限、必要な確認条件がそろっているか。
M2 · 架空の応答を比べるAI提案を混ぜる割合によって、応答の数値と候補がどう変わるか。

これは一般的なAIの内部を解説した図ではなく、CCEで定めた模型の役割分担である。三つをつなげるだけで相談AIが完成するわけでもない。

今、確かめられることと、まだわからないこと

確かめられるのは、定めた規則が模型の中でどう動くかである。実在する人の気持ちや将来を予測する力、ケアの改善効果、安全性が実証されたわけではない。家族の負担や資源の持続可能性など、広い構想のすべてを現在の模型で計算できるわけでもない。

ケア生態系や意思決定支援には、すでに先行研究がある。CCEはそれらを土台にする。関連する考え方と出典は第1記事研究資料の案内で紹介している。

数式が初めてでも大丈夫。まず3分でわかる要約で大事な点をつかみ、下の8記事を順に読むと、全体像からケース、数式の体験へ進める。

Read · 8 chapters

少しずつ読む。手を動かしてわかる。

  1. 01
    ケア生態系とCCE · 約4分

    本人だけでなく、関係を見る

    希望、支える人、道具、AI。そのつながりから始める。

  2. 02
    三つのモデル · 約4分

    ケアを、小さな模型にする

    理解を更新する。決定を扱う。応答の変化を比べる。

  3. 03
    ひと続きのケース · 約6分

    「自分で魚を選びたい」

    母、娘、作業療法士、相談AI。四つの場面を読む。

  4. 04
    M1 · 見立てと提案 · 約5分操作できる

    今日の一言で、見立てはどう変わる?

    新しい情報を取り入れる割合を、自分で動かす。

  5. 05
    M0 · 本人の応答と権利条件 · 約6分操作できる

    いい提案と、本人の決定は別のもの

    返事と確認条件を変え、決定と保留の違いを見る。

  6. 06
    M2 · 合成応答の実験 · 約5分操作できる

    同じ案でも、考えは動いている

    なめらかな応答の変化と、段階的な候補の変化を比べる。

  7. 07
    見取り図と理解度チェック · 約4分

    数式を、相談の流れへ戻す

    三つの模型を混ぜずに、一つのケースから読み返す。

  8. 08
    限界とこれから · 約4分

    小さな模型から、暮らしの中へ

    今わかること、まだわからないこと。次の研究への道筋。

Small experiments

まずは、つまみを一つ動かしてみる。

数値はすべて学習用の仮定。実在する人の気持ちや、安全な外出方法を判定するものではない。

ETICとCCE、二つの入り口。

ETIC 2.0は、人・技術・環境・制度の関係からケアを設計するための考え方。CCEは、その一部を明示的な数式や計算規則にし、確かめられる問いへ進める研究である。どちらから読み始めてもよい。