在宅AIリハは、本人だけを見てはいけない
アプリの効果を、家族・専門職・安全・作業参加を含むケア生態系から考える
要旨
在宅で使える運動アプリ、センサー、人工知能(AI)による個別化や姿勢フィードバックは、リハビリテーションの選択肢を広げつつある。しかし、遠隔リハビリテーション全体の効果と、AIが加わることによる追加効果は分けて考える必要がある。
脳卒中者124人を対象とした非劣性試験では、在宅遠隔群の上肢運動機能の改善は通所群に劣らなかった。ただし在宅群でも、36回中18回を専門職が監督し、少なくとも2週間ごとに計画を見直し、技術支援を提供していた。AI支援型身体リハビリテーションの2023年の系統的レビューでは28プロジェクト中ランダム化比較試験は5件で、臨床効果は一貫していなかった。腰痛を対象とした大規模試験でも、統計的に有意だが臨床的意義が小さい結果と、有意な追加効果を示さない結果の両方がある。
安全性レビューでは、37試験、65,352セッション中の有害事象は201件(0.31%)だったが、試験の92%が安全対策を組み込んでいた。家族介護者への遠隔支援は介護負担を小さく改善した一方、本人向けアプリの導入だけで家族負担が減るとは言えない。機能、疼痛、運動回数に加え、本人が望む生活上の作業、家族と専門職の負担、技術支援、安全、通信、データ管理を同時に評価する必要がある。
本稿は、在宅AIリハの評価単位を「本人とアプリ」から「本人が続けたい生活を支えるシステム全体」へ広げることを提案する。ETIC 2.0との接続は、現時点では実証済みの効果ではなく、今後検証すべき設計仮説として示す。
English abstract
Home-based rehabilitation apps, sensors, and artificial intelligence may expand access to rehabilitation, but the effects of telerehabilitation as a whole should be distinguished from the added value of AI. A noninferiority trial involving 124 stroke survivors found comparable motor outcomes between home-based telerehabilitation and in-clinic therapy; however, the home program included therapist supervision, regular plan revision, and technical support. A 2023 systematic review of AI in physical rehabilitation identified 28 projects but only five randomized trials, with inconsistent clinical effects. In a safety review of 37 trials and 65,352 sessions, 201 adverse events were reported, while 92% of the studies implemented explicit safety practices. Family support, professional oversight, technical assistance, home conditions, connectivity, and meaningful occupation are therefore part of the intervention rather than external background factors. This focused review proposes evaluating home-based AI rehabilitation as a care ecosystem. Its connection to ETIC 2.0 is presented as a testable design hypothesis, not as evidence that the model itself is effective.
結論を先に
- 遠隔リハは、対象と運用条件によって対面と同程度の成果を得られる場合がある。
- その効果を、AIやアプリだけの効果とみなすことはできない。
- AIによる個別化やフィードバックの追加効果は有望だが、まだ一貫していない。
- 安全性は技術に備わった性質ではなく、確認、教育、監視、環境調整を含む運用の結果である。
- 家族は無償の機器係ではなく、支援を受け、負担を評価される当事者である。
- 運動回数や機能だけでなく、本人が望む作業と社会参加へつながったかを測る必要がある。
- 在宅AIリハの評価単位は、本人とアプリではなく、本人の生活を支えるケア生態系全体である。
運動回数は増えた。でも、買い物には戻れない
脳卒中後のBさんは、自宅で上肢訓練アプリを使い始めた。画面の指示に合わせて腕を伸ばすと、カメラが動きを読み取り、AIが姿勢を採点する。毎日の運動回数は増え、達成率も上がった。
Bさんの本当の目標は、近所の店で自分の昼食を買うことだった。しかし、アプリの課題は座った姿勢で腕を動かすところまでだった。袋を持つ、商品を棚から取る、財布を扱う、店まで歩く、人の流れの中で動くといった場面は扱われなかった。
機器の準備は同居する妻が担った。充電を確認し、端末を固定し、カメラの位置を調整し、転ばないよう隣で見守る。接続が切れれば再起動する。Bさんの運動時間が増えるほど、妻の拘束時間も増えた。
担当者の画面には、実施回数、関節角度、達成率が表示された。しかし、「買い物には戻れていない」「妻が毎回準備している」という情報は届かなかった。
この架空事例で、アプリは失敗しているわけではない。測るように設計された運動は増えている。問題は、評価の範囲が狭いことである。
本人の機能だけを見れば成功に見える。生活目標、家族の負担、専門職の確認、住環境、通信、技術支援まで見れば、まだ設計の途中である。
方法
2026年7月29日までに公開された文献を対象に、PubMed、PMC、出版社の論文ページ、Cochrane Library掲載記録、厚生労働省、個人情報保護委員会、日本作業療法士協会の資料を探索した。
検索概念は、telerehabilitation、home-based rehabilitation、artificial intelligence、machine learning、automated feedback、activities of daily living、occupational performance、participation、caregiver burden、clinician workload、technical support、adherence、safety、adverse events、digital literacy、connectivityとした。
遠隔リハ全体、AIの追加価値、安全と継続、家族・専門職、作業参加の5領域を分け、診療指針、系統的レビュー、メタ分析、比較試験を優先した。数値は原論文の全文または公式要旨で対象、比較、期間を確認できるものに限った。本文では主要資料18件を使用した。
本稿は対象限定レビューであり、検索結果の全件スクリーニング、正式なバイアスリスク評価、GRADE評価は行っていない。
遠隔リハ、デジタルリハ、AIリハは同じではない
「AIリハ」という言葉だけでは、実際に何が行われているか分からない。少なくとも次の働きを分ける必要がある。
| 用語 | 本稿での意味 | 例 |
|---|---|---|
| 遠隔リハビリテーション | 通信技術を使い、離れた場所から評価、訓練、相談、支援を行う | ビデオ通話で専門職が動作を確認する |
| デジタルリハビリテーション | アプリ、動画、センサー、ウェアラブル等を用いるリハビリテーション | 運動動画、記録アプリ、活動量計 |
| AI支援リハビリテーション | AIが分類、予測、個別化、姿勢推定、フィードバック等を担う | 動作に合わせた自動助言、運動内容の推薦 |
| 自動化 | 人が行っていた処理の一部をシステムが実行する | リマインダー、回数集計、自動レポート |
ビデオ通話だけの遠隔支援にAIは必要ない。AIを使うアプリでも、専門職と遠隔でつながらないものがある。自動で運動回数を数える機能が、学習するAIとは限らない。
この区別が大切なのは、遠隔リハ全体の研究結果を「AIの効果」として紹介しないためである。
遠隔でも、対面と同程度になり得る
米国理学療法士協会が2024年に公表した診療指針は、現在の根拠がある対象では、遠隔または対面と遠隔を組み合わせたリハビリテーションが、対面と少なくとも同程度の成果を得られる場合があると整理している[1]。
同時に、すべての人に遠隔を勧めているわけではない。本人との共有意思決定、費用、使いやすさ、通信環境、本人と専門職双方の障壁、有害事象への対応を事前に検討するよう求めている。
具体例が、Cramerらの脳卒中後上肢リハビリテーション試験である。米国11施設の124人を、在宅遠隔群と通所群へ割り付け、70分の訓練を36回、6から8週間実施した[2]。
上肢運動機能を示すFugl-Meyer得点の改善は、在宅遠隔群7.86点、通所群8.36点だった。調整した群間差は0.06点(95%信頼区間 -2.14から2.26)で、在宅遠隔群は事前に定めた非劣性の基準を満たした。訓練の遵守率は98.3%対93.3%だった。
脳卒中後の遠隔リハを扱ったCochraneレビューも、日常生活動作について対面と差がない可能性を示した。ただし、研究間の介入と評価の違いが大きく、費用対効果を調べた研究はなく、有害事象の報告も限られていた[3]。
作業療法領域の2019年レビューは15報を採用し、肯定的な結果が多い一方、対面より優れていると確認する根拠、長期効果、費用効果は不足していると結論づけた[4]。2026年の脳卒中者のADLに関するレビューも、対面と概ね同程度という中等度の確実性を示したが、多くの研究に高いバイアスリスクがあり、作業に基づく成果指標が不足していると指摘した[5]。
したがって、遠隔リハは「対面の劣化版」と決めつける必要も、「対面より優れる」と急ぐ必要もない。誰に、どの支援を、どの条件で届けるかを見ればよい。
成功したのは、アプリだけではない
Cramerらの在宅遠隔群では、36回のうち18回を専門職が監督した。治療計画は少なくとも2週間ごとに見直され、専門職は映像と利用データを確認し、課題を調整した。技術的な問い合わせにも対応した[2]。
つまり、この試験が評価したのは「本人に機器を渡し、あとは任せる方法」ではない。
| 介入の構成 | 実際に含まれていたもの |
|---|---|
| 本人への訓練 | 反復課題、ゲーム、教育 |
| 専門職の関与 | 遠隔監督、映像確認、フィードバック |
| 個別化 | 定期的な計画修正 |
| 技術運用 | 設置、接続、問い合わせ対応 |
| 安全 | 有害事象の確認、課題の調整 |
専門職の時間、技術支援、通信環境を研究の外へ追い出し、残ったアプリだけを成果の原因とみなせば、現場で再現できない。
AIの追加効果は、まだ一貫していない
Sumnerらの2023年の系統的レビューは、臨床で試されたAI支援型身体リハビリテーション28プロジェクトを抽出した。しかし、ランダム化比較試験は5件で、機能、活動、疼痛、生活の質に対する効果は一貫していなかった。技術リテラシー、システムの信頼性、利用疲労も実装上の障壁として挙げられた[6]。
その後の比較試験を見ても、結果は一方向ではない。
| 研究 | 対象・期間 | 比較 | 主な結果 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|---|
| Sandalら 2021 | 腰痛461人、9か月追跡 | AI個別化アプリ+通常ケア 対 通常ケア | 3か月の障害尺度はAI群が0.79点良好。4点以上改善は52%対39% | 統計的には有意だが、想定した2点の臨床的重要差に届かなかった |
| Marcuzziら 2023 | 首・腰痛294人、6か月 | AIアプリ 対 ウェブ支援 対 通常ケア | 3か月の筋骨格系健康尺度はAI群と通常ケア群の差0.62点、P=.60 | AIの有意な追加効果を示さなかった |
| Xiaoら 2025 | 慢性腰痛38人、4週間 | AI姿勢フィードバック 対 動画 | 最重度疼痛の変化は-3.00対-1.50、調整差-1.08 | 小規模、平均年齢約29歳、短期、非盲検 |
| Netzら 2025 | 健康な高齢者239人、8週間 | AI個別化運動 対 対照2群 | バランスと一部上肢指標に小さな改善 | 低転倒リスクの健康な集団で、生活参加は未評価 |
selfBACKアプリを通常ケアへ追加したSandalらの試験では、3か月の腰痛関連障害に統計的な差があった。しかし群間差は0.79点で、研究が想定した臨床的重要差2点に届かなかった[7]。一方、専門医療へ紹介された首・腰痛患者を対象としたMarcuzziらの試験では、AIアプリは通常ケアも、個別化しないウェブ支援も有意には上回らなかった[8]。
Xiaoらの小規模試験は、AIによるリアルタイム姿勢フィードバックが動画より短期の疼痛を改善する可能性を示した[9]。Netzらの試験も、健康な地域在住高齢者の一部の運動指標で小さな改善を報告した[10]。
肯定的な研究は可能性を示し、否定的な研究は条件を問い直す。結論は「AIは効く」でも「AIは効かない」でもない。誰に、何を、どの比較条件で、どれほどの人的支援とともに提供したかによって効果が変わる。
安全性は、運用設計の結果である
Shnitzerらの2025年の系統的レビューは、2013年から2023年のランダム化比較試験37件、3,166人、65,352セッションを調べた。報告された有害事象は201件、全セッションの0.31%、1,000セッション当たり3.1件だった。多くは軽度または非重篤で、介入との直接的な関連は乏しかった[11]。
この数字だけを見ると、遠隔リハは安全に見える。しかし、37研究中34研究(92%)が、安全チェックリスト、バイタル確認、定期連絡などの安全対策を採用していた。22研究(59%)では専門職によるデジタル監視が行われ、20研究(54%)は教育や自宅環境に合わせた活動調整を含んでいた。
したがって、この結果は「無人でも安全」を意味しない。安全対策を組み込んだ遠隔リハの研究では、有害事象が少なかったと読むべきである。
在宅では、システムが危険な動きを検出できるかだけでなく、次の流れを設計する必要がある。
- 開始前に、本人の状態と住環境を誰が確認するか。
- 中止基準と、本人が迷ったときの連絡先は何か。
- 警告が出たとき、誰が何分以内に確認するか。
- 通信が切れたとき、訓練を続けるか止めるか。
- 疼痛、転倒、急変を誰が記録し、計画へ反映するか。
- 遠隔では対応できないとき、どう対面支援へ切り替えるか。
安全は製品仕様の一行ではなく、時間の中で動く支援経路である。
続けられるかは、本人の意欲だけでは決まらない
Langらは、デジタル支援を追加した在宅運動のランダム化比較試験10件、1,117人をレビューした。7件ではデジタル支援群の遵守が有意に高く、3件では同等だった。ただし同等だった3件は長期アウトカムを報告した研究であり、短期の利用促進が長期に続くかは不確かだった。測定方法の違いが大きく、メタ分析はできなかった[12]。
専門医療版selfBACKのプロセス評価では、AIアプリ群99人の約3分の1が一度もアプリへアクセスせず、約3分の1は低頻度利用だった。内容が自分に関係するか、十分に個別化されているか、助言を信頼できるか、使いやすいかが受容と継続に関係した[16]。
別の質的研究でも、機能上の問題、不十分な個別化、時間不足、医療専門職の関与不足が障壁として挙げられた。一方、信頼、進捗の可視化、使いやすさは利用を支えた[15]。
「使わなかった人」を意欲不足と分類するだけでは、改善点を失う。文字や音声は理解できたか。端末を固定できたか。生活時間に合ったか。痛みや疲労に応じて変更できたか。相談相手はいたか。継続は、本人と技術の相性だけでなく、周囲の条件から生まれる。
家族は、無償の機器係ではない
在宅AIリハでは、家族が端末の設置、充電、通信、見守り、記録、励ましを担うことがある。これらを「家族の協力」と一語で済ませると、介入に必要な労働が見えなくなる。
Sunらは、脳卒中者の家族介護者へ遠隔支援を提供したランダム化比較試験16件、992人を統合した。介護負担は小さく改善した(標準化平均差 -0.18、95%信頼区間 -0.35から-0.02、エビデンスの確実性は中等度)。介護知識と介護能力も改善したが、確実性は非常に低かった。抑うつ、不安、自己効力感には有意差がなかった[13]。
ここで重要なのは、家族向けの教育や支援を実際に提供した介入の結果だということである。本人向けアプリを導入し、家族へ新しい役割を任せれば、同じ効果が出るわけではない。
Zhangらは、在宅脳卒中者と家族25組を対象に、3か月のコーチング型遠隔作業療法を試した。生活参加、手段的日常生活動作、内発的動機、介護者が感じる肯定的側面に改善がみられ、介護負担は低下傾向だった[14]。小規模なパイロット試験であり確証ではないが、本人と家族を一組で評価し、機能以外の生活結果を測った点が重要である。
家族について最低限測るべきものは、同居の有無だけではない。
- 機器の準備と片づけに使う時間
- 見守りや通知対応の回数
- 技術的な問い合わせを代行した時間
- 不安、睡眠、仕事、外出への影響
- 本人との関係の変化
- 家族自身が必要とする教育と相談
家族の関与を増やすことが、常に良いとは限らない。支援になる関与と、負担や過干渉になる関与を分けて考える必要がある。
機能が改善しても、生活に戻れたとは限らない
在宅リハの研究では、関節角度、筋力、疼痛、バランス、ADL、運動回数が測られる。いずれも重要である。しかし、Bさんが再開したい買い物には、店までの移動、商品を選ぶこと、支払い、人とのやり取り、疲れたときの対処まで含まれる。
作業療法の遠隔支援に関するレビューは、長期効果と費用効果に加え、作業に基づく成果の不足を指摘してきた[4][5]。運動の達成率が高くても、買い物、料理、仕事、学習、子育て、地域活動が改善したとは限らない。
評価は、次の段階を混同しない方がよい。
| 評価段階 | 例 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| システムが動いた | 姿勢を認識した、助言を表示した | 誤認識時に訂正できたか |
| 利用できた | 起動した、運動を完了した | 無理なく続けられたか |
| 身体・認知が変わった | 疼痛、筋力、バランスが改善した | 日常の活動へ使えたか |
| 活動ができた | 更衣、調理、支払いができた | 本人が選んだ生活へつながったか |
| 作業・社会参加が変わった | 買い物、仕事、地域活動を再開した | 意味、満足、役割が保たれたか |
| 生態系が持続した | 家族・専門職の負担が許容範囲だった | 費用、通信、支援体制を続けられるか |
AIの精度を生活上の成果へ結びつけるには、この階段を一段ずつ確かめる必要がある。
ETIC 2.0で導入前に確認する7つの問い
ETIC 2.0は、本人、作業、環境、家族・支援者、専門職、技術・データ、制度を相互に関係するケア生態系として捉える。以下は、本稿の文献から導いた在宅AIリハの導入前チェックである。
図1. 在宅AIリハの評価単位。AIは中心ではなく、本人の作業を支える一要素である。
| 見る対象 | 導入前の問い |
|---|---|
| 本人と作業 | 本人は、生活の中で何をできるようになりたいか |
| AI・技術 | AIは何を評価・提案し、何は分からないのか |
| 専門職 | 誰が定期的に確認し、内容を変更・停止できるか |
| 家族・支援者 | どの役割と時間的・心理的負担が生じるか |
| 技術支援 | 通信・機器トラブル時に誰が対応するか |
| 安全 | 有害事象や急変時に、どう対面支援へつなぐか |
| 評価 | 機能以外の活動、作業参加、家族・専門職負担をどう測るか |
この7項目は、AIを使わない理由を探すチェックリストではない。導入後に「思っていた支援と違った」となる部分を、導入前に見つけるためのものである。
日本で映像、音声、身体情報、専門職の評価を扱う場合は、個人情報の利用目的、閲覧者、保存、委託、漏えい時の対応なども設計対象になる。個人情報保護委員会と厚生労働省の医療・介護分野ガイダンスは、そのための基本的な確認資料となる[18]。ただし、個別のサービスが適法かどうかは、提供形態と扱う情報に応じて別途確認する必要がある。
WFOTは、遠隔作業療法を適切なサービス提供手段として認めつつ、対面と同等の専門職基準、利用者中心性、プライバシー、利用可能性への配慮を求めている[17]。遠隔であることは、作業療法の目的や責任を薄くする理由にはならない。
ETIC 2.0にとって、何が未検証か
ここまでの研究は、ETIC 2.0そのものの有効性を検証したものではない。ケア生態系全体を評価すべきだという本稿の提案は、既存研究の不足と実装条件から導いた設計仮説である。
今後、少なくとも次の問いを検証する必要がある。
- AI単体、AIと専門職、AIと専門職と家族支援では、脱落、安全、参加、負担がどう違うか。
- 技術支援の回数と時間を、介入量として記録できるか。
- 本人の作業参加、家族負担、専門職負担、安全、アクセスを同時に測る最小評価項目を作れるか。
- アプリ利用率ではなく、本人が選んだ生活目標の達成を主要評価項目にできるか。
- ケア生態系マップを用いた導入設計は、通常の導入より継続と安全を改善するか。
- 評価項目を増やす費用と時間に見合う効果があるか。
関係者を増やせばよいわけではない。役割が曖昧になれば、むしろ責任の空白が生まれる。ケア生態系という言葉の価値は、要素を多く挙げることではなく、誰が何を確認し、どの結果へ責任を持つかを明らかにできるかで決まる。
結論
在宅遠隔リハビリテーションは、対象と支援条件によって、対面と同程度の成果を得られる可能性がある。AIによる個別化や姿勢フィードバックにも有望な結果がある。しかし、その追加効果は一貫せず、肯定的な研究にも対象、期間、比較条件の制約がある。
良好な結果を示した遠隔リハには、専門職の監督、定期的な計画修正、技術支援、安全確認が含まれていた。安全性の高い研究の多くも、モニタリング、教育、環境調整を組み込んでいた。家族負担を改善したのは、家族へ支援を提供した介入であり、本人向けアプリを渡すこと自体ではない。
だから、在宅AIリハは本人だけを見てはいけない。
見るべき中心は、AIの精度でも運動回数でもなく、本人が戻りたい生活である。その周囲に、家族、専門職、住環境、技術支援、通信、データ、制度を配置し、効果と負担を同じ表で確かめる。
AIを人から切り離すのではなく、人の生活へ接続する。その接続を設計し、測り、見直すことが、ETIC 2.0に残された次の研究課題である。
記事の位置づけ
本稿は、公開済み文献と公的資料をUnknown Labが整理した対象限定レビューです。文献の結果とUnknown LabによるETIC 2.0への考察を区別して記載しています。個別の診断、治療、リハビリテーション、製品選定を指示するものではありません。
執筆: Daiki Morimoto(Unknown Lab、AI支援) / 確認: 作業療法士
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